THノベルズ「三つの願い」 [図書室]
ついに見つけた!
これを見つけるのにかかったお金は、一億や二億では効かない。でも私はあきらめなかった。ネバーギブアップ、そしてついにあれが、そう、私の手元にやってきた!
私の美貌をもってすれば、それくらいのお金はすぐに手に入る。でも、美貌はすぐに衰えるし、この美貌は、天に与えられた私の才能だ。それを維持向上させるのは、才能を与えられた者の義務だ。
頭のいいものは勉強にすべてをかけ、身体能力にたけたものはスポーツで身を立てるだろう。そしてそのために努力を惜しまず、賞賛を手にする。
しかし、容姿だけは別物だ。容姿に磨きをかければ、賞賛よりも嫉妬と揶揄が降りかかる。なぜ?容姿だって才能の一つじゃないの。容姿を武器に財を手に入れるのは、犯罪でも何でもない。プロ野球選手のFAや、サッカー選手の海外移籍だって似たようなもんじゃない?
あたしは天に容姿という才能を与えられた。それを使って玉の輿に乗るのが、なぜいけないの?あたしはそう思って生きてきたし、それを非難する権利はだれにもない。
あたしが24歳で、あの人が70歳だから?それのどこがいけないの?選んだのはあの人よ。ならば非難はあの人に向けられるはずで、あたしじゃない。お金が目的?そうね、あの人にお金がなければ結婚なんてしやしない。あたりまえじゃない。誰が好き好んで貧乏人と結婚したがるの?
この結婚に反対する人は、所詮自分の分け前が減るのを心配しているだけでしょう?そんなの、同じ穴のむじなでしょ!
いやだ、話がそれちゃった。そうね、あたしが手に入れた物の話よね…
そう、あたしが手に入れたのは「魔法のランプ」。本物よ。だって、裏に「アラジン」って書いてある。他には…、ええっと、「ナポレオン」、「ヒトラー」、…。
どこかで聞いた名前ね?
最近では…「…エモン」。ドラえもんじゃないわね、もしそうならひらがなのはずだし。
ま、いっか。あたしの名前も書いておこっと。
*****
「ハイハイサー、ご主人さま。今度のご主人は、うら若き乙女ですな。」
「さあ、なんでもおっしゃってください、御望みを3つかなえます。」
「え?たった三つなの? アラジンはもっと頼んだはずでしょ?」
「いやあ、最近不況で組合がうるさいんですよ。」
「なので、「望みを3つ追加」というお願いもかなえられません。」
「あら、残念ね。まあいいわ、じゃあ、まず一つ目」
「あたしの美貌を、このまま保ちたいの。」
「承知しました。」
「パパラパー!」
「これであなたの美貌は保たれます。」
「ありがとう、後の二つは思いついたらお願いするわね。」
「かしこまりました、ご主人さま。」
「御用の際にはいつでもお呼びください。」
*****
あれから、20年余りが過ぎた。驚異的な美貌は、社交界でもうわさが絶えない。
残念ね、美容整形じゃなくってよ。うふふ。
でも最近気分がすぐれない。些細なことでイライラすることが多い。病院に行ってみようかしら…
「ハイハイサー、お久しぶりですね、ご主人さま。」
「今日病院に行ってきました。いったいどういうことなの?」
「はあ…」
「いつまでも若いままのはずでしょ!更年期障害って、どういうことなの?」
「いえ、ご主人さま。お望みは「容姿を保つこと」であって、「若いまま」ではありません。」
「ですから、容姿以外は年をとっていくとことになります。」
「ふざけないでよ!外見だけ若くったって意味がないでしょ!」
「このまま死んで行くなんてまっぴらよ!あの頃に戻してよ!」
「はあ…」
「あたしは死にたくないの!いい?わかった。」
「それがお望みでしたら…」
「そうよ!早くして!」
「では…、パパラパー!」
*****
気がつくと、体が軽い。うん、見た目じゃなくて体の中から若返ったのがわかる。
イライラした気分も、今はすっきり爽快だ!グッジョブ!
残った願いはどうしましょう?
まあ、後で考えることにしよう。うふふ。
*****
そして、20年が過ぎた。最近小じわが目立つし、体の線が崩れてきた。
おまけにあのイライラした感じが戻ってきた。どういうことなの?
医者の診断は想像した通り…
「ちょっと!早く出てきなさいよ!」
「ハイハイサー。ご主人さま、お久しぶりです。ご機嫌麗しゅう。」
「麗しくないわよ!どういうこと!また更年期障害よ!」
「はあ、そう申されましても、ご主人さまのお望みは「不死」ということでしたので…」
「この恰好を見てよ!すっかりおばさんじゃない!」
「ええ、でも死にません。」
「え?」
「ご命令通り、ご主人さまは死ぬことはありません。100歳、いや200歳になっても。」
「ちょっと待ってよ。いい?あたしはそんなこと願っちゃいない。」
「元気で、若いまま人生を楽しみたかっただけよ!」
「はあ、そう申されましても…。」
「もういいわよ、最後の願いよ!普通の体に戻して!」
「いえ、ご主人さまは、3つの願いを使いきっています。」
「…そんなわけないでしょ!」
頭の中で考える、ひとつ目が若いまま、二つ目が死にたくない。ほら、二つじゃない。
「いえ、その前に「あの頃に戻して」という願いがありました。」
「え?」
「あの頃に、つまりお体を24歳の時に戻しましたので、最初の願いが無効になっています。」
「そして、最後の願いで「死にたくない」と。」
「ちょ、ちょっと待って…。それじゃ…」
「ええ、普通に年はとっていきますが、永遠に死ぬことはありません。」
年をとって、醜くなっていく自分などまっぴらだ。
おばあさんになった自分など、想像したくもない!
いっそのこと…
魔人は、そんなあたしの心を読んだように付け加えた。
「あ、自殺などなさらないほうがいいですよ。」
「痛みは普通に感じますから。苦しむだけ損です。」
*****
「おい、またあのばあさんかい?」
「ああ、ここの名物ばあさんだ。若いころはきれいだったらしいがな。」
鉄格子のはまった病室の小窓から、中を覗き込みながら警備員と看護士が言葉を交わす。
「記録によると120歳だって?」
「まったく丈夫なばあさんだよ。医者によると当分死ぬことは無さそうだ。」
「すっかりぼけているが、あのランプだけは決して離そうとしないんだ。」
「ああ、「魔法のランプ」だろ。ばかばかしい。」
「いくら金持っててもああはなりたくないね。」
*****
やっと手に入れた。
だれにも渡すもんか…
-------------------------------------------------------------
こんにちは、THです。
前回「愛と…」では、ニヤリとしていただいた方が多かったようで。
作者冥利に尽きます、ウフフの麩。
今回ちょっと長くなってしまいました。ライトな感じに仕上げようと思ったのですが、
(私が)面白くなかったので、没にしました。
そんなこんなで、結局ダークになってしまいました。
後は皆さんで想像してください。
さて、皆さんはどんな願いをかなえてもらいますか?
P.S.
猫師匠他、数人の方でしょうか?古いアニメですよね。出てこい…!
いえいえ、著作権の侵害ではなく、オマージュです。
あのアニメ、大好きでした。
P.S.2
送信エラーに気がつかず、配信が遅れてしまいました。すみません。
これを見つけるのにかかったお金は、一億や二億では効かない。でも私はあきらめなかった。ネバーギブアップ、そしてついにあれが、そう、私の手元にやってきた!
私の美貌をもってすれば、それくらいのお金はすぐに手に入る。でも、美貌はすぐに衰えるし、この美貌は、天に与えられた私の才能だ。それを維持向上させるのは、才能を与えられた者の義務だ。
頭のいいものは勉強にすべてをかけ、身体能力にたけたものはスポーツで身を立てるだろう。そしてそのために努力を惜しまず、賞賛を手にする。
しかし、容姿だけは別物だ。容姿に磨きをかければ、賞賛よりも嫉妬と揶揄が降りかかる。なぜ?容姿だって才能の一つじゃないの。容姿を武器に財を手に入れるのは、犯罪でも何でもない。プロ野球選手のFAや、サッカー選手の海外移籍だって似たようなもんじゃない?
あたしは天に容姿という才能を与えられた。それを使って玉の輿に乗るのが、なぜいけないの?あたしはそう思って生きてきたし、それを非難する権利はだれにもない。
あたしが24歳で、あの人が70歳だから?それのどこがいけないの?選んだのはあの人よ。ならば非難はあの人に向けられるはずで、あたしじゃない。お金が目的?そうね、あの人にお金がなければ結婚なんてしやしない。あたりまえじゃない。誰が好き好んで貧乏人と結婚したがるの?
この結婚に反対する人は、所詮自分の分け前が減るのを心配しているだけでしょう?そんなの、同じ穴のむじなでしょ!
いやだ、話がそれちゃった。そうね、あたしが手に入れた物の話よね…
そう、あたしが手に入れたのは「魔法のランプ」。本物よ。だって、裏に「アラジン」って書いてある。他には…、ええっと、「ナポレオン」、「ヒトラー」、…。
どこかで聞いた名前ね?
最近では…「…エモン」。ドラえもんじゃないわね、もしそうならひらがなのはずだし。
ま、いっか。あたしの名前も書いておこっと。
*****
「ハイハイサー、ご主人さま。今度のご主人は、うら若き乙女ですな。」
「さあ、なんでもおっしゃってください、御望みを3つかなえます。」
「え?たった三つなの? アラジンはもっと頼んだはずでしょ?」
「いやあ、最近不況で組合がうるさいんですよ。」
「なので、「望みを3つ追加」というお願いもかなえられません。」
「あら、残念ね。まあいいわ、じゃあ、まず一つ目」
「あたしの美貌を、このまま保ちたいの。」
「承知しました。」
「パパラパー!」
「これであなたの美貌は保たれます。」
「ありがとう、後の二つは思いついたらお願いするわね。」
「かしこまりました、ご主人さま。」
「御用の際にはいつでもお呼びください。」
*****
あれから、20年余りが過ぎた。驚異的な美貌は、社交界でもうわさが絶えない。
残念ね、美容整形じゃなくってよ。うふふ。
でも最近気分がすぐれない。些細なことでイライラすることが多い。病院に行ってみようかしら…
「ハイハイサー、お久しぶりですね、ご主人さま。」
「今日病院に行ってきました。いったいどういうことなの?」
「はあ…」
「いつまでも若いままのはずでしょ!更年期障害って、どういうことなの?」
「いえ、ご主人さま。お望みは「容姿を保つこと」であって、「若いまま」ではありません。」
「ですから、容姿以外は年をとっていくとことになります。」
「ふざけないでよ!外見だけ若くったって意味がないでしょ!」
「このまま死んで行くなんてまっぴらよ!あの頃に戻してよ!」
「はあ…」
「あたしは死にたくないの!いい?わかった。」
「それがお望みでしたら…」
「そうよ!早くして!」
「では…、パパラパー!」
*****
気がつくと、体が軽い。うん、見た目じゃなくて体の中から若返ったのがわかる。
イライラした気分も、今はすっきり爽快だ!グッジョブ!
残った願いはどうしましょう?
まあ、後で考えることにしよう。うふふ。
*****
そして、20年が過ぎた。最近小じわが目立つし、体の線が崩れてきた。
おまけにあのイライラした感じが戻ってきた。どういうことなの?
医者の診断は想像した通り…
「ちょっと!早く出てきなさいよ!」
「ハイハイサー。ご主人さま、お久しぶりです。ご機嫌麗しゅう。」
「麗しくないわよ!どういうこと!また更年期障害よ!」
「はあ、そう申されましても、ご主人さまのお望みは「不死」ということでしたので…」
「この恰好を見てよ!すっかりおばさんじゃない!」
「ええ、でも死にません。」
「え?」
「ご命令通り、ご主人さまは死ぬことはありません。100歳、いや200歳になっても。」
「ちょっと待ってよ。いい?あたしはそんなこと願っちゃいない。」
「元気で、若いまま人生を楽しみたかっただけよ!」
「はあ、そう申されましても…。」
「もういいわよ、最後の願いよ!普通の体に戻して!」
「いえ、ご主人さまは、3つの願いを使いきっています。」
「…そんなわけないでしょ!」
頭の中で考える、ひとつ目が若いまま、二つ目が死にたくない。ほら、二つじゃない。
「いえ、その前に「あの頃に戻して」という願いがありました。」
「え?」
「あの頃に、つまりお体を24歳の時に戻しましたので、最初の願いが無効になっています。」
「そして、最後の願いで「死にたくない」と。」
「ちょ、ちょっと待って…。それじゃ…」
「ええ、普通に年はとっていきますが、永遠に死ぬことはありません。」
年をとって、醜くなっていく自分などまっぴらだ。
おばあさんになった自分など、想像したくもない!
いっそのこと…
魔人は、そんなあたしの心を読んだように付け加えた。
「あ、自殺などなさらないほうがいいですよ。」
「痛みは普通に感じますから。苦しむだけ損です。」
*****
「おい、またあのばあさんかい?」
「ああ、ここの名物ばあさんだ。若いころはきれいだったらしいがな。」
鉄格子のはまった病室の小窓から、中を覗き込みながら警備員と看護士が言葉を交わす。
「記録によると120歳だって?」
「まったく丈夫なばあさんだよ。医者によると当分死ぬことは無さそうだ。」
「すっかりぼけているが、あのランプだけは決して離そうとしないんだ。」
「ああ、「魔法のランプ」だろ。ばかばかしい。」
「いくら金持っててもああはなりたくないね。」
*****
やっと手に入れた。
だれにも渡すもんか…
-------------------------------------------------------------
こんにちは、THです。
前回「愛と…」では、ニヤリとしていただいた方が多かったようで。
作者冥利に尽きます、ウフフの麩。
今回ちょっと長くなってしまいました。ライトな感じに仕上げようと思ったのですが、
(私が)面白くなかったので、没にしました。
そんなこんなで、結局ダークになってしまいました。
後は皆さんで想像してください。
さて、皆さんはどんな願いをかなえてもらいますか?
P.S.
猫師匠他、数人の方でしょうか?古いアニメですよね。出てこい…!
いえいえ、著作権の侵害ではなく、オマージュです。
あのアニメ、大好きでした。
P.S.2
送信エラーに気がつかず、配信が遅れてしまいました。すみません。
・体脂肪率を10%以下にする
・そいつを(無茶食いしても)永遠に持続させる
・取り敢えず10億円もらう
こんな感じで如何でしょうか?
そっかぁ、高級ブランデーの旦那と、チョビ髭の旦那と、小太りの旦那はこいつを使っていたのかぁ・・・
あーらびんどびんはげちゃびーん!!!
by A.U. (2009-09-03 12:48)
THっちん
エエなぁこれ。こういうパターン好き。(^_^)
懐かしいねぇ、ランプの精。
しかし、出て来い・・・って、エライ古いのね。(^^;;)
by 015 猫目 (2009-09-03 18:33)
ヒラケーゴマ!(違
いやあ、今回も道明寺のお話よかったです(ぇ
お願いを3回聞き入れられる…。
ドラゴンボー〇は一回なのに…。
>最近不況で組合がうるさいんですよ
ええ、今度この組合を紹介してください(笑)
では、また来週!
by 061 CSの語り (2009-09-03 23:36)
THさん
おぉ、シャザーンをやらねば誰がやる!
誰も知らないネタと思っていたのに、お言葉が出たので
「アイアイサァー」してみました。
ダークかもしれないけど、そのくらい短めでちゃんとストーリーにできること自身で凄いです!
又、色々な世界を覗かしてください。
今3つの願いを叶えてもらうなら...
1)お金ほしい!
2)20歳くらいに戻りたい(特に肝臓)
3)連れと餓鬼と猫をもう少し聞き分けよくして!
ですかね。
たさ
by たさ (2009-09-04 00:26)
THん。
しえらざぁど!!なネタにひねり加えてスパイス効かせて。。。
相変わらずの冴えで麩なぁ。。。
うらやまし酢!!
づるは。。。。
1.すぐに〇〇して。
2.早く〇〇して。
3.ずっと〇〇でいたい。。。
あぁ。言えないわ。(ぇ
by 014けんづる (2009-09-04 16:15)
ちょっと前なら、砂がこぼれてきて、
“お前の望みを言え!どんな望みもかなえてやろう!”
でしょうか?
もちろん、私は年代的に、
“ぱぱらぱー”
の、方ですが。
by 069しょうた (2009-09-04 17:15)