THノベルズ「満願成就(前編 [図書室]
ピンポーン
チャイムの音が聞こえた。ドアを開けるとダークスーツの男が一人。
何かのセールスマンだろうか?
「はい、わたくしN大社から参りました、Sと申します。本日はT様の初詣に関し、お話があって伺いました。」
確かに今年の初詣はN大社だった…。特に住所など書いた覚えもないが?
まあ、どうせ暇だし話を聞いてみるのも面白いかもしれない。
来月には引っ越しだし、あとくされもない。
「はあ、まあ、どうぞ。」
「それでは失礼いたします。」
Sと名乗る男は、腰を深々と折ると一歩中へ入ってきた。
「N大社というと…。確かに初詣に参拝させていただきましたが、本日はどういったご用件ですか?」
「まずは、こうやって話を聞いていただけることについて、お礼申し上げます。最近はどうも警戒されてしまって、門前払いが多くて…。」
「実は、N大社は今年の「本願社」に指定されています。」
「「本願社?」」
「はい、「本願社」というのは、毎年10月に出雲大社で行われる「八百万委員会」で決定される「願いをかなえる神社」です。つまり、今年の初詣でN大社に参詣いただいた中から一人の願いを一つだけかなえるということです。」
「ということは、私の初詣の願いを?」
「いえ、あれから11カ月もたっていますので、状況の変化もあるかと思います。そこで私がT様の最新の願いを伺おうというわけです。」
…頭がおかしいんじゃないか?何だ「八百万委員会」って。
するとSは私の考えを読みとったかのように、続けた。
「ご不信は当然のことです。」
「ではこうしましょう、最新の願いをお伺いする前に私の言葉が本当だと証明してみます。」
「証明?」
「はい、そうですね…。T様は神奈川FC(フットボールクラブ)のファンでらっしゃいますね?」
「現在の状況は後半30分、2-0で東京SC(サッカークラブ)のリード。間違いありませんね?」
テレビをつけると、その通りだった。
神奈川FCはライバルである東京SCと優勝をかけて争っている。
「後、15分ですが、これから神奈川FCを勝たせましょう。」
「はあ?」
確かにこの試合に勝てば、神奈川FCはリーグ優勝に大きく前進する。
「では、ちょっと失礼します。」
Sはかばんから携帯電話を取り出すと、どこかへかけ始めた。
「はい、Sです。ええ、やっとお話を聞いていただけました。はい、神奈川FCです。よろしくお願いします…。」
電話が終わると、残り10分。もう逆転は無理だろう…。
Sはまた俺の考えを読みとったように続けた。
「いえ、委員長が約束してくれました。証明のためなので、やってくれるそうです。」
テレビ画面を見ると、東京SCのDF(ディフェンダー)がボールを回している。GK(ゴールキーパー)に向かってボールを戻したその時、何かに足を取られ転ぶGK。ボールはその横を転々とゴールに向かって転がって行った…。一点差、残り9分。
次のプレーでは、神奈川FCのMF(ミッドフィルダー)がパスをカット。
ゴールに向かって突進する。
熱狂する神奈川スタジアム。握りしめた拳に汗がにじむ。
ペナルティエリアに入った瞬間、後ろから東京SCの選手がタックル。
足を抱えて蹲るMF。主審はペナルティキックを指示。
ゴールが決まり同点、残り4分。
盛り上がる両チームのサポーター。怒号と歓声がスタジアムに響く。
残り1分、最後のプレーだ。
勢いは神奈川FCが勝っている、ゴール前の混戦からシュート。
相手のDFにあたったボールは、ゴールマウスの中に転がって行った。
オウンゴールで逆転。
長い笛が響き、3-2で逆転勝利。
呆けたように、画面に見入る俺に後ろからSの声が聞こえてきた。
「信用していただけましたか?」
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こんにちは、THです。
猫師匠に触発されたわけではないのですが、SFです。しかも前後篇。
ナビスコ杯の決勝に途中まで酷似していますが、またただの偶然です。
Tさんのもとには、Sさんが来なかったようです。
ということで、Tさんはどんな願い事をするのでしょうか?また、その結果は?
私の書く話ですから、ひねくれていることだけは請け合います(笑)。
では、また来週!
P.S.猫師匠
リレー小説の件、前向きに検討しませんか?
ここではネタばれになってしまうので、三串のメッセージとかでやり取りするのはいかがでしょう?裏降(最近入ってないですが)のアドレスにメールをいただいても結構です。
チャイムの音が聞こえた。ドアを開けるとダークスーツの男が一人。
何かのセールスマンだろうか?
「はい、わたくしN大社から参りました、Sと申します。本日はT様の初詣に関し、お話があって伺いました。」
確かに今年の初詣はN大社だった…。特に住所など書いた覚えもないが?
まあ、どうせ暇だし話を聞いてみるのも面白いかもしれない。
来月には引っ越しだし、あとくされもない。
「はあ、まあ、どうぞ。」
「それでは失礼いたします。」
Sと名乗る男は、腰を深々と折ると一歩中へ入ってきた。
「N大社というと…。確かに初詣に参拝させていただきましたが、本日はどういったご用件ですか?」
「まずは、こうやって話を聞いていただけることについて、お礼申し上げます。最近はどうも警戒されてしまって、門前払いが多くて…。」
「実は、N大社は今年の「本願社」に指定されています。」
「「本願社?」」
「はい、「本願社」というのは、毎年10月に出雲大社で行われる「八百万委員会」で決定される「願いをかなえる神社」です。つまり、今年の初詣でN大社に参詣いただいた中から一人の願いを一つだけかなえるということです。」
「ということは、私の初詣の願いを?」
「いえ、あれから11カ月もたっていますので、状況の変化もあるかと思います。そこで私がT様の最新の願いを伺おうというわけです。」
…頭がおかしいんじゃないか?何だ「八百万委員会」って。
するとSは私の考えを読みとったかのように、続けた。
「ご不信は当然のことです。」
「ではこうしましょう、最新の願いをお伺いする前に私の言葉が本当だと証明してみます。」
「証明?」
「はい、そうですね…。T様は神奈川FC(フットボールクラブ)のファンでらっしゃいますね?」
「現在の状況は後半30分、2-0で東京SC(サッカークラブ)のリード。間違いありませんね?」
テレビをつけると、その通りだった。
神奈川FCはライバルである東京SCと優勝をかけて争っている。
「後、15分ですが、これから神奈川FCを勝たせましょう。」
「はあ?」
確かにこの試合に勝てば、神奈川FCはリーグ優勝に大きく前進する。
「では、ちょっと失礼します。」
Sはかばんから携帯電話を取り出すと、どこかへかけ始めた。
「はい、Sです。ええ、やっとお話を聞いていただけました。はい、神奈川FCです。よろしくお願いします…。」
電話が終わると、残り10分。もう逆転は無理だろう…。
Sはまた俺の考えを読みとったように続けた。
「いえ、委員長が約束してくれました。証明のためなので、やってくれるそうです。」
テレビ画面を見ると、東京SCのDF(ディフェンダー)がボールを回している。GK(ゴールキーパー)に向かってボールを戻したその時、何かに足を取られ転ぶGK。ボールはその横を転々とゴールに向かって転がって行った…。一点差、残り9分。
次のプレーでは、神奈川FCのMF(ミッドフィルダー)がパスをカット。
ゴールに向かって突進する。
熱狂する神奈川スタジアム。握りしめた拳に汗がにじむ。
ペナルティエリアに入った瞬間、後ろから東京SCの選手がタックル。
足を抱えて蹲るMF。主審はペナルティキックを指示。
ゴールが決まり同点、残り4分。
盛り上がる両チームのサポーター。怒号と歓声がスタジアムに響く。
残り1分、最後のプレーだ。
勢いは神奈川FCが勝っている、ゴール前の混戦からシュート。
相手のDFにあたったボールは、ゴールマウスの中に転がって行った。
オウンゴールで逆転。
長い笛が響き、3-2で逆転勝利。
呆けたように、画面に見入る俺に後ろからSの声が聞こえてきた。
「信用していただけましたか?」
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こんにちは、THです。
猫師匠に触発されたわけではないのですが、SFです。しかも前後篇。
ナビスコ杯の決勝に途中まで酷似していますが、またただの偶然です。
Tさんのもとには、Sさんが来なかったようです。
ということで、Tさんはどんな願い事をするのでしょうか?また、その結果は?
私の書く話ですから、ひねくれていることだけは請け合います(笑)。
では、また来週!
P.S.猫師匠
リレー小説の件、前向きに検討しませんか?
ここではネタばれになってしまうので、三串のメッセージとかでやり取りするのはいかがでしょう?裏降(最近入ってないですが)のアドレスにメールをいただいても結構です。
狼よ!我を巣喰い給え!
あう
by A.U. (2009-11-05 08:32)
THん。先週米サボってゴムで麩。
おぉ。。。
何となく。
何となくで麩が、
神社ネタはリレーを意識して魔麩?
え?自意識過剰?
。。。。申し訳。
続編楽しみな展開で麩!!
そして、兄さまとのリレーも楽しみにして魔麩!!
いいコラボ出来るといいで麩寝!枠枠!!
関係ないけど、あうたんの米読んで、ライラライラライラライラライ♪と口ずさみそうになってしまった(爆)
by 014けんづる (2009-11-05 14:36)
楽しそうなSFになりそうですね。
何とかのおおかみを何とかのウルフと
マジで勘違いしていた子供時代がありました。「本当です。」
神主さんのイントネーションがそう聞こえたのでしょう。
自分ながら、なんで気がつかなんだんだと思う。
ウルフに神秘性を感じていたのか、わけわからんボケである。
by 074 わけわからん (2009-11-05 20:58)
いいねぇ、こういうパターン。
好きでーす。(^_^)
後半が楽しみやね。
リレーは、メルっときました。m(__)m
by 015 猫目 (2009-11-05 21:06)
さて、願い事をかなえさせていただきましたお代金でございますが…、と示された請求書の金額欄を見てびっくり!
そこには、あなたの名前が記入されているだけ。他には何もなし。
そうなんです。その後の人生の残り部分に訪れるであろう幸福の総量の残額全部(プライスレス)がお代だったのです。しかも一括払いの分割なし。
人生に訪れる幸福の総量はあらかじめ決められていて、それを、いつ、どのくらい使うことになるのかは本人の知るところではありません。普段は幸福銀行に預けてあるのです。銀行預金みたいに。
それを今回、一気に引き出したので、残額がゼロになるというわけ。
さあ、どうなさいます?
セールスマンはニヤリと笑いながら、かばんから何やらパンフレットのような書類を出して言いました。
「私どもは、融資も承っておりますよ。」と。
……みたいな展開でしょうか?
by 045 ch-k ってゆーかC★ちさとでーっす(笑) (2009-11-07 18:18)
(*^U^*)♪わくわくww
どんな願いが叶うのかなぁ。
ほんとに叶うのかなぁ。
叶えたい願いって なんだろ・・・。ひとつに絞るのって難しいよね
by 032_oyasan@まおたん (2009-11-07 21:02)
SFなの?ファンタジーな展開を期待してはいけないんですねw
ちさとんのコメントを読んだら、「たまいし」を思い出したので、師匠とのコラボがますます楽しみに…(違)
by 030 ダルコ (2009-11-08 04:03)
鈍ガメラなうちに後編まで出てしまってるぅ。
あっちにまとめてコメントしよう。
スタタタタタッ(((((((((((_´Д`)
ちょす。
by 044 ichigo (2009-11-14 07:35)