THノベルズ「幸せな時間」 [図書室]
いくつになっても、クリスマスが近づくと心が躍る。
特に今年は。
退社後、銀座へと足を向けた。クリスマスプレゼントに注文していた品物が届いたと連絡があったから。
クリスマスプレゼントを親戚以外に贈るなんて、何年振りだろう。
決してさみしかったわけではないが、来週のことを考えると思わず笑みが浮かぶ。
「絵梨ちゃん、喜んでくれるかしら?」
高校生の女の子に贈るプレゼント、会社の女の子に聞いたら余計に混乱してしまった。
結局自分の好みで選んでしまったが、ちょっと渋すぎたかもしれない。
不景気だなんだといわれているが、少なくとも街角のイルミネーションは明るく輝いている。
*****
一人でいることがさびしかったわけではない。仕事は順調だし、やりがいもある。信頼できる友人もいるし、甥っ子や姪っ子はとてもかわいい。
人が言うより、一人の生活はずっと楽しい。何しろ時間を100%、自分のためだけに使えるのだから。
でも、今年のクリスマスは格別だ。来年の春には家族ができる。
毎年思う、プレゼントは人にあげるためのものではないと。
甥っ子や姪っ子、そして新しくできる娘のことを思い、プレゼントを考える。それだけで自分がとても幸せだと感じる。
そう、プレゼントは自分が幸せだと気付かせるための神様からの贈り物なのだ。
「プレゼントを上げる相手がいる」ことは、それだけで、気が遠くなるような確率の上に存在する奇跡なのだ。
*****
北風に思わずコートの襟を合わせた。
「うー、寒い…」
こんな独り言を言うなんて、すっかり「おばさん(笑)」だ。
今年のクリスマスは、二人で過ごす最後のクリスマスになる。
だからクリスマスディナーへの招待は丁重にお断りした、はずだった。
しかし、結局は絵梨ちゃんに押し切られる形となった。
「毎日顔を合わせてるのに、クリスマスまでお父さんと二人で食事なんて、ぞっとしちゃうわ。それに、「二人で過ごす最後のクリスマス」じゃなくて、「三人で過ごす最初のクリスマス」でしょ。」
プレゼント期待してるね、と最後に付け加えたのは照れ隠しもあったのだろう。
そこまで言われて断るのは女がすたる。というわけでもないが、いま、こうして待ち合わせ場所に立っている。
プレゼントはご期待に添えるかどうかはわからないが、ここに来る前にレストランに預けてきた。
二人分のプレゼントをかかえて、待ち合わせ場所に立っているなんて格好悪い。
もうすぐ待ち合わせの時間だ、ショウウィンドウでざっと点検。
*****
「お待たせ!」
絵梨ちゃんがはずむような足取りで近付いてきた。
体中から元気があふれているようだ。
「お父さんは?」
「さっき電話があったわ。先に行っててくれって。仕事でちょっと遅れるって言ってたけど…。」
「えー、仕事じゃないと思うな。きっとプレゼントを受け取ってからお店に来るのよ。」
そう言った彼女は、私が小さなハンドバッグしか持っていないのに気がついたようだ。
しまった、という顔になる。
「心配しなくても大丈夫よ、もう預けてあるから。じゃあ、行きましょう。」
「えー、心配なんかしてないよ。さすがだなと思って。お父さんが紙袋抱えてきたら、『スマートじゃない』って教えてあげなきゃ。」
*****
街角に流れるBGMが変わった。この曲は…
そう、「I saw mama kissing Santa Claus」だ。
プレゼントの紙袋を手に、レストランへ急ぐ。
絵梨はもう彼女と落ち合っただろうか。
今年のプレゼントは二つ。プレゼント選びも二倍の時間がかかった。
プレゼントは選ぶ時間も楽しいが、渡した後の時間もそれ以上に楽しい。
そして、その時間を一緒に過ごせる人がいることに感謝しよう。
誰に?誰だっていい。こんな奇跡のような幸せな時間をくれた「誰か」に。
----------------------------------------------
こんにちは、THです。久しぶりの通常営業となります。
クリスマスイブです、みなさんは誰と過ごしていますか?
友人、家族、恋人、そして一人の人にもメリークリスマス!
オダジマさんは、耳の痛いことをお書きになっていますが、私は主義として「踊らにゃ損」と思ってます。ええ、踊り狂ってましたよ、若いころは…。
でも、実際のところ(即物的な意味も込みで)プレゼントは素敵な行為だと思います。相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら選ぶ時間が好きです。とても幸せな気分にしてくれます。
それがたとえ、自分に対してのプレゼントだったとしても。
では、2009年が皆さんにとって良い年であったことを祝して。
Merry Christmas !!!
特に今年は。
退社後、銀座へと足を向けた。クリスマスプレゼントに注文していた品物が届いたと連絡があったから。
クリスマスプレゼントを親戚以外に贈るなんて、何年振りだろう。
決してさみしかったわけではないが、来週のことを考えると思わず笑みが浮かぶ。
「絵梨ちゃん、喜んでくれるかしら?」
高校生の女の子に贈るプレゼント、会社の女の子に聞いたら余計に混乱してしまった。
結局自分の好みで選んでしまったが、ちょっと渋すぎたかもしれない。
不景気だなんだといわれているが、少なくとも街角のイルミネーションは明るく輝いている。
*****
一人でいることがさびしかったわけではない。仕事は順調だし、やりがいもある。信頼できる友人もいるし、甥っ子や姪っ子はとてもかわいい。
人が言うより、一人の生活はずっと楽しい。何しろ時間を100%、自分のためだけに使えるのだから。
でも、今年のクリスマスは格別だ。来年の春には家族ができる。
毎年思う、プレゼントは人にあげるためのものではないと。
甥っ子や姪っ子、そして新しくできる娘のことを思い、プレゼントを考える。それだけで自分がとても幸せだと感じる。
そう、プレゼントは自分が幸せだと気付かせるための神様からの贈り物なのだ。
「プレゼントを上げる相手がいる」ことは、それだけで、気が遠くなるような確率の上に存在する奇跡なのだ。
*****
北風に思わずコートの襟を合わせた。
「うー、寒い…」
こんな独り言を言うなんて、すっかり「おばさん(笑)」だ。
今年のクリスマスは、二人で過ごす最後のクリスマスになる。
だからクリスマスディナーへの招待は丁重にお断りした、はずだった。
しかし、結局は絵梨ちゃんに押し切られる形となった。
「毎日顔を合わせてるのに、クリスマスまでお父さんと二人で食事なんて、ぞっとしちゃうわ。それに、「二人で過ごす最後のクリスマス」じゃなくて、「三人で過ごす最初のクリスマス」でしょ。」
プレゼント期待してるね、と最後に付け加えたのは照れ隠しもあったのだろう。
そこまで言われて断るのは女がすたる。というわけでもないが、いま、こうして待ち合わせ場所に立っている。
プレゼントはご期待に添えるかどうかはわからないが、ここに来る前にレストランに預けてきた。
二人分のプレゼントをかかえて、待ち合わせ場所に立っているなんて格好悪い。
もうすぐ待ち合わせの時間だ、ショウウィンドウでざっと点検。
*****
「お待たせ!」
絵梨ちゃんがはずむような足取りで近付いてきた。
体中から元気があふれているようだ。
「お父さんは?」
「さっき電話があったわ。先に行っててくれって。仕事でちょっと遅れるって言ってたけど…。」
「えー、仕事じゃないと思うな。きっとプレゼントを受け取ってからお店に来るのよ。」
そう言った彼女は、私が小さなハンドバッグしか持っていないのに気がついたようだ。
しまった、という顔になる。
「心配しなくても大丈夫よ、もう預けてあるから。じゃあ、行きましょう。」
「えー、心配なんかしてないよ。さすがだなと思って。お父さんが紙袋抱えてきたら、『スマートじゃない』って教えてあげなきゃ。」
*****
街角に流れるBGMが変わった。この曲は…
そう、「I saw mama kissing Santa Claus」だ。
プレゼントの紙袋を手に、レストランへ急ぐ。
絵梨はもう彼女と落ち合っただろうか。
今年のプレゼントは二つ。プレゼント選びも二倍の時間がかかった。
プレゼントは選ぶ時間も楽しいが、渡した後の時間もそれ以上に楽しい。
そして、その時間を一緒に過ごせる人がいることに感謝しよう。
誰に?誰だっていい。こんな奇跡のような幸せな時間をくれた「誰か」に。
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こんにちは、THです。久しぶりの通常営業となります。
クリスマスイブです、みなさんは誰と過ごしていますか?
友人、家族、恋人、そして一人の人にもメリークリスマス!
オダジマさんは、耳の痛いことをお書きになっていますが、私は主義として「踊らにゃ損」と思ってます。ええ、踊り狂ってましたよ、若いころは…。
でも、実際のところ(即物的な意味も込みで)プレゼントは素敵な行為だと思います。相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら選ぶ時間が好きです。とても幸せな気分にしてくれます。
それがたとえ、自分に対してのプレゼントだったとしても。
では、2009年が皆さんにとって良い年であったことを祝して。
Merry Christmas !!!
THさん
続編ですね。
プレゼントを選ぶのって楽しいんですよねぇ。
ボクも選んで買うの好きです。
やっぱりその向こうにある笑顔ですよね。
同じくバブルの頃に青春だった、あう
by あう (2009-12-24 08:35)
この時期どこのお店に入ってもBGMはクリスマスソング。
しかも商品を見比べながら鼻歌している自分。
季節ですものね。
今週も ポッ と暖かくなるお話ありがとうございます。
ステキなクリスマスを!!!
by 023-QT (2009-12-24 13:56)
おひさです。
トレンドは「巣ごもり」です。
ということで、外出は新型インフルエンザ感染の危険があるのでパス。インターネットショッピングでお酒も、食事も、プレゼントも。なんていう生活を送っております。以前なら、「出不精」「オタク」なぞと呼ばれていたでしょうが。あはは、いい時代です。
とはいえ、女3人には「お金使いすぎ!」といわれてますが。なにせ、シャンパン、ドンペリの子供の誕生年のビンテージ物やら、ドンペリではないですが結婚した年の物やら買ったら、買った私ですら「え?こんなに!」というほど買い込んでしまいまして。
まさかいらっしゃらないとは思いますが、今日シャンパンを開けた「あなた」。開けたらその日のうちに飲みきってください。ものによっては翌日のほうがおいしくなるものもあるようですが、ほとんどはその日のうちに飲みきったほうがいいようです。シャンパングラスに注いで、一晩中がんばって翌日の明け方にそのグラスを見ると一すじの泡が立ち上っていた、なんてのは都市伝説ですから。
ちなみに、インターネットでドンペリは1万円ちょっとですが、銀座のバーやホストクラブでは5万円前後とか。あは、「巣ごもり」バンザーイ!
ではでは。 Merry Christmas!
by kk (2009-12-24 20:31)
>プレゼントは自分が幸せだと気付かせるための
神様からの贈り物なのだ
だから贈る人も、贈られる人もみんな笑顔になれるんですね。
“だから、僕は、あの子にとっての
サンタクロースになりたかったんだ”
ドラマだったか、小説だったか忘れましたが、
すごく記憶に残っている台詞を思い出しました。
みんなが、誰かにとってのサンタクロースになれますように
MERRY CHRISTMAS to みなさま
by 069 しょうた (2009-12-25 21:28)
久々の通常営業。
しかも、クリスマスイブに、タイムリーなハートウォーミングなあの物語の続編?逆目線?
素敵で麩なぁ。
きっと昨日は皆に幸せな笑顔があふれてたでしょうねぇ。
遅れてしまいましたが、幸せな気分をありがとうで麩!!
by 014けんづる (2009-12-26 15:37)