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《白旗新聞》人ができないことをやる人 030ダルコ [校内新聞]

こんにちは。スイッチが切れている時は寝てばっかりの030ダルコです。

校長先生の募金というキーワードに触発され、ちょっと登校してみようかと思い立ちました。
いつか「赤い彗星」とか「レッドサンダー(電車の方)」とか「なんちゃって博多学」なんかを書こうかと思っていたのですが…まあ、聞いてくださいよ。(読んでください、ですね。)

高校生の時、『卒業生による講演』というものがありました。
地元でもそれなりに歴史のある高校で、有名人も何人かいらっしゃったので、先輩のありがた~いお話を頂戴する貴重な機会というわけです。
ところが、成績は下から数えて何番目。授業中は寝てるか落描きしてるか『銀河英雄伝説』を読んでるか。
何を間違ってこんな学校に来てしまったのか。悩む。…いえ、ここは悩むところではありません。
講演があると聞いたわたしは「よっしゃ!ちかっぱい昼寝できるばい!」と思ったのでした。

体育館のステージに出てきたのは、40代のおいちゃん。小っちゃくて髪はボサボサ、身なりもテキトー。
それがなんとお医者さんらしい。
パキスタンの山岳地帯にある無医村で、アフガニスタン難民のハンセン病治療に取り組んでいるというお話でした。
本当にすぐ居眠りを始めてしまったので、話はほとんど記憶に残っていません。
「えーと…難民がいるよーなところで奮闘するえらいお医者さんっちゃねー♪」
「…」

数年後、久米宏が司会をする『ニュースステーション』で特集コーナーがありました。
テレビに出てきたのは、あの「こまい(小さい)おいちゃん」でした。
「お母さん、あの人うちのガッコの先輩らしかよ~。すごかろ?」
「へぇ~、そうねー(そうなの)、あんたも少しはシャキッとせんね。」
「……」

時々テレビや雑誌で見かけると、おいちゃんの白髪は増え、肌は陽に焼けてすっかり現地人のような姿に。
寄付では賄えない活動資金を得るため、日本に帰ってきて講演に飛び回っているそうな。まるで出稼ぎですね。
「なんかあの人お医者さんやのに、あっちの国で井戸掘ったりしよんしゃあよ?」
「なんでそげんことになっとーと?」
「………」

小さなおいちゃんの名前は、中村哲さん。
NGOである「ペシャワール会」の代表です。
昨年、アフガニスタンで誘拐事件があったので、ご存知の方も多くいらっしゃると思います。

中村さんはパキスタンに渡り、アフガン難民の治療を通して「ハンセン病が発生する所は衛生環境も悪く他の感染症も多い。感染症の原因は不衛生な水だ。」と感じ、飲み水のための井戸を掘り始めました。
戦闘で壊された古い井戸を修理し、枯れた井戸はさらに深く掘る。新しい井戸も掘る。
パキスタンのペシャワールがある辺りとアフガニスタンは山脈で繋がっていて、国境がないに等しい。度重なる紛争で大量の難民がパキスタンに流れ込んでいる…きっと高校での講演の時、中村さんはそんな話もしてくれたはず。
彼はペシャワールに診療所を作り、診療活動のかたわらで井戸を掘り続けました。

そして、アフガニスタンで史上最悪の大干ばつが起こり、国土は砂漠と化しました。
餓死するのは小さな子どもたち。
飢えと貧しさ。
農業国なのに農業ができず、かと言って代わりの職もなく。
干ばつが拍車をかけ、今日生きる食べ物を得るために、男たちは食事が出る戦闘へ参加していく。
ちなみにターリバーンは悪の組織ではなく、もともと宗教に基づいた教育や自治を行う組織なのだそうです。
学校や集会所や教会を兼ねる建物を武装組織の拠点だと言って外国が破壊するため、多くの民間人が命を落としています。
そのため外国人を敵とみなし、戦闘や誘拐が起こっているのです。
日本人は戦争をしないからよい印象を持たれていたのに、戦闘を支援する国だとして敵視されつつある。
現地スタッフの方々も身の危険を感じていたようです。

大干ばつの後、『緑の大地計画』という言葉がペシャワール会から聞こえてきました。

「アフガニスタンの砂漠を緑の大地にしよう。」
砂漠化した荒野に水路を作ろうなんて、もうお医者さんの発想じゃありません。
(井戸を掘る時点でタダのお医者さんではありませんが。)

「現地の人を雇って仕事を与え、戦闘に関わらなくていいようにしよう。」
政府の公共事業も真っ青です。水と食べ物と職があれば彼らは平和に暮らせるんです。
多少の重機はあるけど、井戸を手で掘り、手で灌漑水路の護岸に石を積み上げ、日本の水路に柳が生えているのをヒントに川べりに柳を植える。
木の枝の形と根の形は似ているそうですが、柳は土を抱え込むように根をはるのだとか。
天然の護岸、もし壊れても木と石ならアフガン人で修理することができる。
専門家もいないのに、お医者さんがそんなことを思いつくなんて。
水路と言っても、映像を見るまでは「田んぼの用水路」みたいなのを想像していました。
あんなに大きな川や水門を人の手で作ってるなんて信じられませんでした。

「畑が復活したら、アフガン人自身で作物を育てて水路を維持できるように指導しよう。」
そんじょそこらの農業支援とは違います。現地で育つ植物を何年も試行錯誤して栽培研究し、土地にあった植物の育て方を現地の人に教える。収穫して食べられるようになって初めて、不審がっていた農民から信頼を得ることができる。
テレビで見た映像は、見渡す限り荒れ果てた荒野が輝く緑の大地になっていました。
そして農民や子供たちの笑顔、笑顔…

アフガン人が貧困であるが故、テロに身を投じてしまわないように、雇用して技術指導をする。教育を受けていない人たちは、何が正しいのか、それが悪いことなのか、そんなことを学ぶ機会もない。
生きていくためにどんなことでもする。 平和はいくら戦闘を重ねても永遠にやってこない。

わたしは2年前にペシャワール会の一口会員になりました。
きっかけはフジテレ…じゃない、mixiのとある方の日記。
そこに「すごいすごいと言うだけなら誰でも出来る。自分に出来ることは寄付だけだ。」というような一文が。
「中村さんは福岡県民の誇りだ。でもどんなに尊敬しようと、たった3千円の支援も実行できない人にとやかく言う資格はない。」
「ボランティアとか口で言うのは簡単。行動しないで言うだけのヤツは偽者だ。」勝手に翻訳しますが、そんなよーなことが書かれていました。ともかく「ガーン(顔文字は自重)」とショックを受けました。

わたしはもちろん戦争が嫌いだし、世界が平和であって欲しい。
でも自分の命を懸けて、外国へ行って人を助けようという勇気はありません。
だから中村さんとペシャワール会のスタッフや現地で働くワーカーを尊敬していました。
昨年のあの痛ましい事件は、関係者の方々がどれだけ辛い思いをされただろうかと胸が痛くてたまりませんでした。

何かしたいと思っていても、なかなか行動に移すことは難しいです。
ホームページを読んで振込先も知っている、なのに何年も何年も参加していませんでした。
「わたしにだってできることもあるじゃないか!」

ちょうど時を同じくして、会社の人が「いや~。今日セミナーでええ講演を聞いたんや!」と資料を見せてくれました。
講師は中村哲さんでした。
入会の振込用紙がついていたので、速攻で「ください!一緒にお金振り込んでおきます!」と自分の分も一緒に申し込みしました。
会報にはパキスタンから撤退してアフガニスタンに拠点を移したことや、なお危険な情勢と背中合わせでプロジェクトを進める様子がつづられています。
もう中村さん以外の日本人スタッフは全員帰国しています。

お金を出せばいいと思っている日本人の典型かもしれません。
でも、彼らはあえて政府から何の援助ももらわず、会員の寄付と講演料等だけで活動を続けています。
未使用はがきや切手を募集して会報を送付しています。
「頑張って!と応援するよりも、黙って一口会員になろう。」
2年前、それが最初のわたしにできること、でした。

もし彼らを応援してもいいと思う方がいれば、一緒に応援しませんか?
すでにあなただけの寄付先を持っていたり、ボランティア活動に参加されているなら、ずっとずっと、できる限り長く続けてください。
他にも応援できること、自分にできることってたくさんあると思います。
学園のみんなでそんな活動も一緒にやっていけたらいいですね。

※もっと知りたい方のご参考に。
■ペシャワール会中村医師「丸腰だから現地の人に伝わるものがある」(2008/06/05 JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/world/0806/0806048723/1.php

■ペシャワール会(公式HP)
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/

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mame

初めて米をします

ダルたんにこの話を聴くのは(読むのは…)2回目
その講演の時は私もその場にいたはず、なのに恥ずかしながらまるっきり覚えていません

最近私は「やってみたいと思った時が多分やる時」理論でいろいろとものごとを考えています
自分でも理由が分からなくてもいい、何か心の動きの兆しでも感じたなら、それについて真剣に考えない手はない、というような
1回目にこの話を聴いた時と、今と、自分の中での感じ方が違ってるのは、この理論が発動してるのかも?

ふむ
前はタイミングじゃなかったみたいだけど、今はまた違う風が吹いているみたい
いい機会をもらった気がします
この心の動きを、大事に受け止めたいと思いました
近いうちに、私も参加してみようと思います
ダルたんありがとう
by mame (2009-07-02 01:50) 

Z

まずはそう言うことが現在行われていて、そのようなことを頑張っている人がいるということを知りました。

先ずは興味を持つことから始めたいと思います。


by Z (2009-07-12 15:47) 

011 まちるだ

ダルコしゃん、コメント遅くなりました。

この記事はだいぶ前に読んで、絶対コメントしたいと思いながらも、時間がどんどん過ぎてしまいました。ペシャワール会の存在は知っていたものの、具体的な活動内容や中村医師の事については知らず、詳しく教えてくれたダルコしゃんに感謝すると同時に、素晴らしい記事だと思いました。

こういった記事を押し付けがましくなく書くのは難しいと思うし、コメントするにも難しい題材だと思います。エベレストでゴミ拾いをした某有名登山家ですら、時に偽善者呼ばわりされる世知辛い世の中ですから。

日本人の心にはボランティア活動に対して照れがあるのかもしれません。それともひねくれているのか(笑)海外では誰もが素直に賞賛している事なのに、同じ日本人がその登山家を批判しているのには呆れました。やっている本人はそれなりの信念や志があってやっている事。要は自己満足にも似ているのだけど。他人からの賞賛が欲しくてやっている人は少数だと思うし、そんな人達は長く続けられないと思っています。

で、ボランティアや募金の前にまずやっぱり、「知ること」が一番大事なんだと思います。知らなければ何も始まらない。心が動くこともない。もちろん知ったからと言って何か動かなければいけないわけではなく、ささやかな自分の日常がどれほど幸せに満ちているかを知る手がかりにもなります。知らずに満たされないと言ってる人もたくさんいますよね。

神様が平等と誰かが言うのなら、神様は誰に対しても平等に無関心なのだと思います。世の中には不平等が溢れています。
ひとりひとりできる事は違うと思うけど、コップの水を分け合えるような、そんな優しい世界であって欲しいと願っています。

エコバッグやマイ箸運動だって、立派なボランティア活動だと私は思いますよ。やるなら臆せず恥ずかしがらずに、信念を持ってガンガンやりましょう!^^

by 011 まちるだ (2009-07-27 16:57) 

俵

いい話でした。
寄付をします。
by 俵 (2009-09-28 22:51) 

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